自律神経系についての話が続きました。
自律神経系といえば、いまアツいのは「ポリヴェーガル理論」ということで、
今回は「ポリヴェーガル理論」について書いてみます。
まずはじめに、ポリヴェーガル理論は、一つの仮説です。
まだ証明されたり、定説とされている考えではありません。
ただ、私の考えでは、このポリヴェーガル理論により、危機的状況に対する人の反応、
特に性暴力の被害者や、ASD者の「凍りつき」を理解する時に役に立つように思います。
ポリヴェーガルとは
自律神経は、交感神経と副交感神経に分けられるのでした。
副交感神経は主に迷走神経=Vagus Nerveによって司られています。
ポリヴェーガルpolyvagalという言葉は、 poly=多重のvagal=迷走神経の、という意味です。
ポリヴェーガル理論では、副交感神経系は「背側迷走神経系」と「腹側迷走神経系」という、2つの異なる枝に分かれていると考えます。
そして、動物の自律神経は、生物の発生段階と並行して、
背側迷走神経系―交感神経系―腹側迷走神経系
と発達してきたと考えます。
背側迷走神経系
「背側迷走神経系」は、より原始的な迷走神経で、節足動物や軟体動物のような無脊椎動物から存在します。
ポリヴェーガル理論ではこれを別名「植物性迷走神経」と呼び、原始的な生存戦略に関連していると考えます。
これらの動物は脅威にさらされると死んだふりをして「凍りつき」、資源を節約することで生き延びようとします。
交感神経系
素早く泳ぐ魚に代表されるような脊椎動物が出現すると、交感神経系が発達しました。
危機的状況に対して、心拍数を上げて動きを高め、「闘うか逃げるか(Fight-or-Flight)」の反応をするために役立ちます。
腹側迷走神経系
そして、ほ乳類あたりから群れでの交流をより豊かにすることができる腹側迷走神経系が発達し、交感神経系を抑えて緊張を緩和し、社会的反応がより上手にできるようになりました。
腹側迷走神経を使うことにより、危機的状況の手前の状況で、対象に対して「交渉」や「適応」を行うことによって乗り越えようとします。
人間社会では
これらから、ポリヴェーガルな自律神経系の働きにより、
人間社会で意見の食い違いや、ちょっとした問題が起きたときには、
まず腹側迷走神経系を使って「私は敵ではないですよ」という友好の合図を出し、
「話し合い、交渉」することで事態を解決しようとします。
それがうまくいかず、危機に陥ったときには、交感神経系が優位となり、「戦うか逃げるか」の反応で事態を打開しようとします。
そして、それもうまくいかなった時には、背側迷走神経系が優位になり、
「声が出ない、体が動かない、頭の中が真っ白になる」といった「凍りつき」が起こります。
長くなりました。
これらのポリヴェーガルな自律神経系の働きという考え方が、
メンタルヘルス領域の理解にどう役に立つのか、
はまた次回に続きます。